旋盤での中ぐり加工が難しいというのは本当?その理由とは?
旋盤を使った中ぐり加工は非常に難しく、高い技術が必要です。なぜなら、加工面が金属の内側なので加工状況の確認が行いにくく、内部に切りくずがたまりやすいからです。また、金属に刃先以外が当たりやすい上に刃物が振動しやすいので、中ぐり加工で部品の精度を維持するためには高い技術力が必要になります。
「旋盤」とは、回転させた金属に固定した刃物を当てることにより、部品の加工を行う機械です。主に、製造業の工場で使用されています。
旋盤でできる加工作業は、金属の外側を削ったり溝を作ったりするだけではありません。ドリルで下穴を開けてから、内側をくり抜きながら広げる「中ぐり」加工も可能です。
旋盤を使用して中ぐり加工をするのは非常に難しく、高い技術が求められます。中ぐり加工の難易度の高さには、以下の4つの要因が関係しています。
・加工している面が見えにくい
・金属内部に切りくずがたまりやすい
・金属に刃物の先以外が当たりやすい
・刃物が振動しやすい
1-1.加工している面が見えにくい
中ぐり加工は金属の内側をくり抜きながら広げる加工のため、外側を削る加工とは違って加工中の面が見えにくいです。とくに筒状の部品は奥行きが深くなるほど、奥底の加工面が見えにくくなります。そのため、貫通させて穴を開ける部品よりも底がある筒状の部品を加工する方が難易度は上がるのです。
中ぐり加工をする際は見づらい中での刃物の当て方が難しく、細心の注意が必要です。誤って部品の底の面を突き破ってしまうと、部品としての役割を果たせなくなるため、最初からやり直さなくてはいけません。また、必要とする厚さよりも削り過ぎて薄くなると、部品の精度が落ちることになってしまうので、注意しましょう。
中ぐり加工で気をつける点は、2つあります。1つ目は、ハンドルの目盛りを見て刃物が金属内部にどれだけ届いているかを確認することです。2つ目は、刃物が金属に当たっている音の高さを頼りにすることです。加工中の面を見ることが難しいので、視覚以外の感覚も大切にしながら中ぐり加工を進めていきましょう。
1-2.金属内部に切りくずがたまりやすい
ノコギリで木材を切断した経験はあるでしょうか。木材を切断すると「木くず」が出ます。それと同様に、金属を加工するときにも、金属の「切りくず」が発生するのです。
金属の外側を加工しているときであれば、切りくずは自然と周辺に落ちます。しかし、中ぐり加工は内側を削るので、切りくずが内部にたまってしまいます。切りくずがたまると加工面に傷をつける原因にもなるので、精度の高い仕上がりにはなりません。
加工面の精度を上げるためには、切りくずを排出する必要があります。そこで、排出しやすい形状の切りくずにしたり、エアを当てて一定方向に排出されるようしたりと、工夫しています。
1-3.金属に刃物の先以外が当たりやすい
奥行きのある部品の中ぐり加工を行う場合、刃物だけでなく刃物を固定している根元の部分も金属に当たりやすくなります。金属に刃物の先以外が当たると部品に傷がつき、精度を下げる原因になります。
旋盤を使用するときは、どの程度の奥行きまでなら刃物の先以外を当てずに中ぐり加工できるのか、旋盤によって異なる特性をつかまなければいけません。また加工する金属や部品の形状に合わせて、金属の回転速度や刃物の当て方、送り具合を慎重に見極めながら調節できてはじめて、効率良く高精度の中ぐり加工を行えるのです。
奥行きのある部品の中ぐり加工では、その奥行きに応じた長い刃物を使用します。刃物は、根元でしか固定されていません。そのため、刃物が長くなるほど振動しやすくなります。この振動のことを、「びびる」といいます。
太くて硬い刃物を使用することで、振動を軽減することは可能です。しかし、奥行きのある部品や金属が薄くなるまで削らなければいけない部品を加工する場合、太くて硬い刃物を使用しても振動しやすく、難易度が高くなります。また、場合によっては細くて軟らかめの刃物を使用しなければいけないこともあります。
刃物の振動が大きいと、金属の内側を均一に中ぐり加工することができません。振動を抑えるためには、金属に刃物を当てる面積を小さくすることが重要です。また、金属の回転速度を遅くすることも有効です。
どちらも作業効率は低下してしまうものの、部品の精度を維持するためには欠かせない対応といえるでしょう。中ぐり加工には、状況に合わせた丁寧な判断や対応が必要です。
2. まとめ
旋盤を使用して金属の内側を削る中ぐり加工は、加工している面が見えにくいだけでなく、切りくずがたまりやすいため難易度が高いです。また、金属に刃物の先以外が当たったり刃物が振動したりすると、傷をつけてしまうなど精度が落ちる危険性があります。
精度の高い中ぐり加工をするためには、旋盤の特性をつかみ、加工する金属や部品の形状に合わせて丁寧に対応すことが大切です。
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